傍にいなくても -松本潤-





深夜に帰宅するのは珍しくない。
そして、同棲してる俺と彼女の家に、
電気が付いていないことも最近では珍しくなくなっている。
別に彼女と喧嘩した訳でもなく。
ただ、彼女も仕事が忙しいって言うだけだ。

‥‥だけど、今日でどれくらい顔見てないんだろうな?
っていうか、アイツ、家に帰ってきてないんじゃねぇか?

台所のシンクも、風呂も、水を使った形跡が全くない。
忙しくなると職場に泊まり込んでるのは今までにもあったから、
そう気にもしないし慣れてるつもりだけど。
こうも長くなると心配にもなる。
放り出していた携帯を手にして、履歴を探して発信ボタンを押す。


--プルルルル--プルルルル--プルルルル--


呼び出し音が何度かして、
出ないのかと早々に諦めた時に呼び出し音が途切れた。



『もしもし、潤!?』

「‥‥よ、久しぶり」

『久しぶりっ。
ごめんね、ロクに連絡もしなくて』

「いいよ別に、仕事忙しいんだろ?」

『もうね、大変』



携帯越しに聞く久しぶりの彼女の声は、
「大変」と言いながらも楽しそうだ。
今の仕事が本当に好きなんだな。



『潤の方は?
映画の撮影とか舞台の稽古とか始まってるんでしょ?』

「ああ、でもドラマの時ほど‥‥
っていっても、今日帰ってきたのもついさっきだしな」

『そっか、お疲れ様。
ちゃんとご飯食べてる?』

「俺は大丈夫だよ。
お前の方こそちゃんと食べてんのかよ?」

『うん、食べてるよ。
ここにはそこら辺しっかりしてる同僚いるし』



苦笑気味に話されるその同僚のことは、何度か聞いたことある。
同僚って言っても、中学生時代からの友達だったとか。
しかも、男なんだよなー。
好みのタイプじゃない、ってコイツははっきり言ってたけど。



(おいコラ、いつまで私用電話してやがんだ。
明日お客様来られるんだぞ、アクセサリーは出来たのかよ)

『いつまでって、まだホンの1〜2分でしょ。
アクセはアナタの目の前に鎮座してんでしょーが。
それも見えないくらい疲れてんなら一度寝てきなさいよ』

(寝てられっか、この状況でっっ)



突然始まった向こうの会話に、ちょっと呆然。
コイツのあんなに遠慮のない話し方は、
俺や家族相手以外では聞いたことがない。
ちゃんと気心知れたヤツと仕事してるんだな。
‥‥確か、職場のヤツってほとんど中学生時代からの友達とかじゃなかったか?
俺よりコイツとの付き合いの長いヤツとだったら、
そりゃ話し方だって遠慮もしないよな。



『潤、せっかく電話くれたのにゴメンね。
ウチの社長、寝不足続きで機嫌悪いんだ。
もうしばらく帰れなさそうなの』



申し訳なさそうな、今の社長相手に話していたのとは、
明らかに違う沈んだトーンの声に俺は何となく嬉しくなった。
仕事が忙しくても、俺と話していたいって思ってくれてるって事だし。
それが分かっただけでも、電話した甲斐があったよな。
そんな意図は、全くなかったにしろ。



「仕事してる時に電話したのは俺の方だし、気にするな。
俺も、そろそろ寝るし」

『ありがとう、潤。
おやすみなさい』

「ああ、おやすみ」



ピッと通話を切り、しばらく携帯をジッと見る。
よし、明日もまた仕事頑張るか。
声も聴けて、元気なのも確認出来たことだし。
今夜はぐっすり眠れそうだ。





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自分と同じくらい仕事が忙しい彼女も丸々受け止めちゃう潤くんが書きたくて。
でも何となく寂しがりな潤くんになっちゃいました。
だけどもお互いの存在がお互いを支える関係は表現出来たかな?


2006-04-01UP